第4章 ◆二人きり
夏目は先程のやりとりを思い出し
薄暗い空をぼんやりと眺めながら
帰路を進んでいた。
……さなは、
今お世話になっている親戚に
どう思われているだろう。
夏目は、自分とは反対に
妖が見えることは話さず生きてきたさなが
あのような言われ様をされることに
理解出来ずに居た。
「何かあるのか…。」
考えを巡らせても情報が少な過ぎて
解決しそうにない現状に溜息を零す。
「さなが話すまで待つか…
って言って待っていても
話さないだろうな。
寧ろ、こちらが聞いてみても
話してくれなさそうだ。」
夏目が必死に自問自答していると
「夏目、お前もまた
さなの持つ友人帳の名を
返していくつもりか。」
夏目と同じように並行して歩く
ニャンコ先生が質問を投げかける。
「さなは、この先もつだろうか…。
親戚がああじゃ、家でも休まらないだろう。」
ニャンコ先生に全く聞く耳持たずの夏目に
ニャンコ先生が額にシワを寄せる。
その瞬間ー
ーゲシッ!!
「っで!!?」
地面の方からニャンコ先生が
勢い良く夏目に飛んできて
アッパーの形で盛大にぶつかった。
「夏目、
お前のお節介に付き合ってやったんだ。
七辻屋の饅頭8つで借りを返そう。」
勢い良く飛んで来た本人が
尻餅をつく夏目の横で
毛繕いをしながら提案を出す。
「ニャンコ先生…は
勝手に着いてきただけだろ!」
夏目は衝撃の痛みが残る顎をさすりながら
片方の腕でニャンコ先生の頭に拳を落とすと
そのままスタスタと歩き出した。
……
「さなのあの姿を見たら
誰もが同じことを思うはずだろ。」
……同じ境遇なら、
俺も同じように進んでいく。
友人帳の名前を返せるのは
さなと俺の二人きりなのだから。