第17章 ◆花イチ匁
「 さな、
全然気付かなくて吃驚したよ。
⋯今帰りか?」
「 はい、
驚かせてごめんなさい。
楽しそうだったから少し見てました。」
そう言ってにこりと笑うさなの横に
良く見慣れた一人の女子生徒も立っていた。
「 こんにちは、夏目先輩。」
「 あぁ、こんにちは。」
それは、
名取の仕事を初めて手伝ったあの日に
さなの身を心底案じた彼女の友人、実代。
すらっと背が高く、落ち着いた雰囲気から
下級生とは思えない風貌で、
さなとよく一緒に居る所を見る事から
おっとりとしているさなに
しっかりと付いていてくれる存在なのだろうと
夏目は少し安心していた。
「 おーい、夏目!」
ふと、背後から
追いかけっこが終わった西村と笹田が
北本と一緒に夏目の元へ帰ってくる。
「 こんにちは、」
西村たちへ振り返る夏目の背後から
ひょこっと顔を出して挨拶をかけるさな。
「 わっ、さなちゃん⋯!
い、いつからそこに??」
さなを見て顔を赤らめながら
辿々しく言葉を繋げる西村。
「 西村先輩が、彼女欲しい!
って叫んでた所から見てました。」
「 んなっ!」
さなの言葉に
更に顔を真っ赤にする西村へ
「 ぷっ。」
夏目は思わず吹き出した。
「 夏目!笑ったな!?
大体、さなちゃんが居るなら
一声くらい掛けてくれたって良いだろ?
そもそも、
何でお前にはそんな美少女ばかり寄ってくるんだ?
美形だから?んんんー?」
吹き出す夏目の頬を抓って
もはや八つ当たりのように打ちまける西村。
「 いたっ、
ごめんごめん、西村⋯痛い、」
夏目は謝りながら
西村の両手を離そうとするが離れず、
「 こんにちは、
西村先輩、北本先輩、笹田先輩。
さなと同じクラスの園村実代です。
よろしくお願いします。」
西村の手を離してくれたのは
実代の言葉だった。