第17章 ◆花イチ匁
「 うわぁっ!」
「 ぅぬっふぁっ!?」
夢の中で驚き
そのまま、ガバッと飛び起きた夏目に
弾き飛ばされたニャンコ先生の悲鳴が
重なった。
「 何事だ!全く、お前は
静かに起きるという事を知らんのか!」
「 ぁ、あぁ⋯ごめん先生。
少し、変わった夢を見たんだ。」
顔面から畳に着地したニャンコ先生が
真っ赤になった顔をスリスリと
毛繕いのように撫でながら、
片方の肉球で夏目の頭をポカスカと叩いた。
これは、幾度と無く見た光景である。
お決まりのように
ニャンコ先生に叩かれても
夏目は拒むこと無く
自分の非を認め、素直に謝罪する。
「 しかし、
花一匁(ハナイチモンメ)、か。
敵味方、奪い合う
昔の遊びだろう。」
「 あぁ、それ。
最後、相談するんだ。
けど、夢では⋯」
「 勝負を挑まれていたな。」
「 あぁ⋯。」
「 それも、レイコに。」
「 あぁ⋯、」
そこまで話して沈黙が流れる。
ふと、違和感に気付いた夏目が
ニャンコ先生へ視線を送れば、
ニヤリと笑った真っ赤な
ニャンコ先生の視線とぶつかる。
「 ⋯っ、
人の夢を覗くなっ!」
グリグリと
ニャンコ先生の頭を潰しにかかる夏目。
「 勝手に流れてくるのだ!阿呆!」
届かない手を伸ばしながら
ニャンコ先生が抗議すること数分
夏目は腕が疲れたという理由付きで
ニャンコ先生を解放した。
「 はぁ、何も起こらなければ良いけれど⋯」
溜息混じりに呟く本音だが
「 無理だろう。
私に流れてくる程
思念と妖力の強い夢だからな。」
面白そうにニャンコ先生がぶった切った。
「 一応言っておくが、
面倒な事には関わるなよ。」
「 ⋯分かってるよ。」
ー⋯俺だって、
好きで突っ込んでいるつもりなんてない。
そんな夏目の脳裏に浮かぶのは
一人の少女だった。