第3章 ◆二人出会
「君も、レイコさんの孫なのか?
そのレイコさんや俺と違って
全然似てないし、もっと…か、わ…。」
その先を言うにも
夏目は小っ恥ずかしくなり
顔を赤らめ、目を背ける。
その姿を見てさなは微笑むと
「 はい、私もレイコさんの孫です。
夏目先輩の事は親戚から聞いてます。
最初見た時は違うと思ったんですけど・・・
先輩も、普通の人なら見えない妖が見える事で
苦労してきたことも分かります。」
さなは
親が亡くなり叔母に引き取られるまでの
親戚の拒絶ぶりを思い出し、
恐らくそれは夏目の力の所為であり
夏目はその事で辛い生活を続けていたであろう事は
容易に想像できた。
「 今は、大丈夫ですか?」
きっと、見えなければもっと普通に
ただ楽しい日々を過ごせているだろう、と
見える妖を無視して生きてきた自分とは反対に
妖のその姿をみんなに知らせようとしていた夏目が
変人扱いされていたと思うと
さなは心苦しくなり
そう、声をかけずには居られなかった。
夏目は心配そうな表情を浮かべて問うさなを見て
大丈夫。と微笑むと
「今は、藤原さんという家でお世話になっていて
妖が見える事は伝えていないんだ。
だから、という訳じゃないけれど
とても良くしてもらっていて
俺自身、とても幸せだよ。」
そう笑った。
その姿にさなは安堵の表情を浮かべる。
「 良かった…。
ところで、その猫ちゃんは妖…ですよね?」
視野に入っていたその猫が
毛づくろいを始めるのを見て
ふと疑問を投げ掛ける。
その言葉に猫が顔を上げ
さなを見据えると
「私は高貴な妖でこの姿は仮の姿だ。
仕方無く夏目の立派な用心棒をしてやってる。
私の事はニャンコ先生とでも呼ぶんだな。
…もうひとりの、レイコの孫よ。」
そう自己紹介すると
腹が減った。と立ち上がり
既に日が暮れ真っ暗になりかけている空を見上げ
帰るぞ、塔子が心配する。と歩き出す。
その掛け声に二人は
汚れた制服を手で払いながら
ニャンコ先生の後を追った。