第15章 ◆狐ノ嫁入
「 ・・・と、言う訳でございますゆえ
夏目レイコ様
是非、我ら雨乞いの神・・・日照雨さまの
お嫁様になって頂きたく
私が馳せ参じた次第です。」
「 いや・・・だから、
俺はレイコさんじゃないぞ。」
目の前の小さな子狐を見下ろす夏目は
大きな溜め息を零した。
・・・それは、
梅雨入りの宣言があった一週間ほど経った頃。
梅雨と云うのに雨が降ったのは
梅雨入り宣告された初日の一日のみで、
それ以降は毎日
暑い日差しに照らされていた。
そんな、ある学校帰りの道端で
夏目はまたもや妖に絡まれていた。
「 そのような御冗談は
もう聞き飽きたでございますよ。
ささ、迎えの者が
待っておりますから参りましょう。
早く早く。」
夏目の否定する声も聞かずに
その腕を引っ張り何処かへ急ぐ子狐の妖。
「 だから・・・俺は」
「 まーた変なのに絡まれおって。」
子狐妖に引っ張られる腕を引っ込めながら
夏目が再度、否定をしようとすれば
頭上から降り注ぐ夏目の用心棒の声。
「 ニャニャーーンッ」
見上げれば、殆ど球体に近いそのボディを
クルクルと回転させて舞うニャンコ先生。
そして、そのままー
ー・・・ゲシッ!!
「 ぬぅほッ!」
子狐へと落下した。
「 着地成功。」
「 ニャンコ先生・・・。」
攻撃の勢いで着地したニャンコ先生が
横たえる子狐妖の上でポーズを決めると
スタスタ、と夏目の横へと移動する。
「 やれやれ、
狐の妖は人に化けて悪戯を繰り返すと聞いている。
関わると面倒だ。夏目、行くぞ。」
「 え、あぁ・・・。
でも、この子狐動かないぞ。
先生のアタックが
キツ過ぎたんじゃないか?」
家路を進み始めるニャンコ先生とは反対に
夏目は動かない子狐妖の元へしゃがみこみ
その姿を人差し指で啄いた。
「 阿呆。
私の飛び付き程度で消えてしまうような
そーんな、ひ弱な妖が
凶暴なレイコに頼み事をする筈が無いだろう。」
そう、ニヤリと笑うニャンコ先生が
チラッと振り返った時
「 だ、達磨狸の妖め・・・」
子狐妖が顔を上げた。