第3章 ◆二人出会
さなはぼんやりとした視界が
徐々に鮮明になり
自分が夏目の腕の中だとわかると
そそくさと飛び出した。
「 夏目先輩っ?!
あの、これは…
えぇっと色々とありまして、
ていうか、どうしてここに?!」
さなは妖の事を話すまいと
頭の中で言い訳を考えるも
何一つ言い訳が思い浮かばず
咄嗟に出た疑問をそのまま投げ掛ける。
そのアタフタとしているさなの姿を見て
夏目は自然と過去の自分と重ねてしまい
大丈夫だから。と諭すと
さなの腕を掴み
グイと自分の元へ引き寄せる。
「 ぅわっ!?」
いきなりの事でさなは体勢を崩し
またも夏目の腕の中に納まってしまい
抗議の声を上げようと夏目を見上げると
「この子はレイコさんじゃないぞ。
如羅、名は返されたんだ。
もう、用が無いならこの子に近付くな。」
夏目はさなの背後を見ながら
そう言い放つと
その細い腕からは想像出来ない程
強く優しい力でさなを抱き留める。
さなは背後の気配が気になり、
少しだけ後ろを向くと、そこには
名を返すまでの如羅とは全く違う
殺気立った如羅が目の前に居た。