第14章 ◆誕生ノ日
あれから数ヶ月
意識は戻ったが、未だ入院している健司の
身の回りの世話をしに
さなは週に3日程
放課後や休日を使って
病院へと出向いていた。
そんな、
しとしとと雨の続く
梅雨真っ只中なある日の放課後。
「 望月さなちゃんって
居ますか?」
放課後ともあって、
少ない生徒が掃除を終え
帰り支度をしている中
ドアの方から聞こえる
透き通るような可憐な声が
さなの名を呼んだ。
「 ・・・はい、
私・・・ですが・・・。」
タイミング良く、
ドアの近くに居たさなは
顔を上げ、返事をする。
さなを呼ぶその女子生徒は
夏目のように色素の薄い髪を
肩までで揃えられており、
ニコニコと微笑む姿が好印象な
恐らくは上級生の女子生徒だろう。
同じ学年では見かけた事が無かった。
「 あ、あなたがさなちゃんね!
・・・噂通り、
可愛いっ!」
「 ・・・えっ。」
返事をしたさなが
女子生徒の元へ行けば
その女子生徒はさなを見るなり
何故か抱きしめ、嬉しそうに微笑んだ。
「 あ、ごめんなさい。
可愛いものを見ちゃうとつい・・・。
わ、私は、2年の多軌透。
夏目くんと同じ学年で
クラスは違うんだけど、
夏目くんと田沼くんからよく
あなたの話を聞いていたの。
それで私も一度さなちゃんに会ってみたくて
急に来ちゃったんだけど
・・・ごめんね。忙しいかな?」
多軌はハッと我に返ると
困惑気味のさなを解放した。
可愛いと判断し
誰彼構わず抱き着くのであれば
少し厄介な癖の持ち主である。
さなはその事について
少し心配になりながらも
夏目の友人と聞いて
自然と笑顔を見せた。
「 さっき、
掃除が終わったばかりなので
大丈夫です。」
そう笑い、
帰り支度を終えた鞄を
顔の横まで持ち上げ多軌に伝える。
「 じゃあ、一緒に帰らない?
初対面で図々しいかもしれないけど、
・・・話したい事があるの。」
「 ・・・はい!」