第13章 ◆本音の絆
それから夏目は
さなの元へ戻ると
鞄を手に、病室を後にした。
「 じゃぁ、また
夕方に来るよ。
・・・
さな・・・、
西村や田沼もお見舞いに来たがっていたから
もし、良ければ
一緒に来たいんだけど。
あ、でもさなが
無理するようだったらいいんだ。
退院してから、
いつでも会えるんだし・・・。
・・・ただ、その・・・、
さなの事をとても心配していて・・・
さなの意識が戻ったって聞いたら
もしかすると
行くって聞かないかも、しれないんだ・・・。」
病室を出て行く間際にそう
躊躇いがちに話す夏目。
そんな夏目に
ニッコリと笑顔を向けて
深く頷くさな。
「 い、いいのか?」
「 ・・・はい。」
さなが頷くのを見て
目を見開く夏目が再度問えば
今度は言葉を混じえて笑顔で頷く。
「 ・・・ありがとう、さな。
じゃあ、行ってきます。」
そうして、さなに挨拶をして
病室を後にした夏目は
夏目が去った後も
じっと、さなが扉を見続けていた
なんて事は知らないだろう。
夕方になり、
案の定西村と田沼を連れて帰ってきた夏目は
普段通りに話し、動けるさなを前に
また、更なる安堵を感じていた。
若い高校生達が揃えば
それなりに盛り上がる病室内。
幾度と無く看護師からお叱りを食らうのは
言うまでもなく。
その賑わう病室を
病院の外から眺める影が二つ。
「 ふふ、良かったですね
彼女が元気になって。」
「 ・・・あぁ、
あとは健司さんだな。」
「 彼もきっと、すぐ回復しますよ。」
「 そうだな。」
「「 私たちの、
恩師・・・だから(ですから)ね。」」
健司は易々と消える人間では無い、
二人はそう胸のうちに吐き
病室を眺めていた。
祓い屋業を大きくさせた唯一の人間。
その人間性は癖があるものの
的場一門を始め、名取家や他の祓い屋とも
深く関わりを持ち
信頼関係にあった人物。
切れない縁がそこにはあったのだ。
今までも、そしてこれからも・・・。