第3章 ◆二人出会
「 どこにいるのー…?」
森に入り20分余りが経とうとしていた頃
昼間居た妖がどこにも見当たらず、
一切の整理がされていない険しい山道を
さなは只管、突き進んでいた。
「 どこ行ったんだろう…。」
半ば、諦めかけたその時
「バアーーっ!!!!」
背後に気配を感じたかと思うと
大声を上げながら昼間の妖が
さなの目の前に現れた。
「 わぁぁっ!!」
いきなりの事で驚き
さなはその場に尻餅をつく。
「 なっ、何…?」
「レイコ遅イカラ、
イツモノ仕返シ、イタズラ、シテヤッタ。」
……ーこの妖も、
レイコさんの被害者なんだね…。
会った事もないレイコさんは
妖に名を返還する時に
頭の中に流れ込む妖の記憶で
何度か見たことがあるが、
さなには似ても似つかない程
逞しく、尊敬に値するほど強かった。
そのせいで時にイタズラが行き過ぎるという
場面を覗いたことがあるが、
その度にさなは、
妖を同情の目で見てしまうのだった。
「レイコ、名前
カエセ、カエセ」
妖は細い腕をパタパタと上下させながら
さなに催促をする。
その姿に待って待ってと静止を促しながら
さなは起き上がり
スカートに付いた土をパンパンと払うと
鞄から友人帳を取り出し
目の前の妖を頭にすぅっとイメージした。
「 我を守りしものよ
その名を示せ…。」
友人帳が妖の名前を割り出し
さなはそれを手に取り
手を打ち、息を吐くと
「 如羅(シクラ)
貴方に返します。」
すぅっと妖の名が
如羅に光りながら返されると
今までにないほどの疲労感で
さなはその場に崩れ
意識を手放した。