第12章 ◆夜が明け
真っ暗だった闇も晴れ
雲一つ見当たらない晴天が眩しい
港の早朝。
船から一飛びで港まで着いたニャンコ先生は
一度だけ、港に足をつけ
再度、また空に向かって飛び立った。
「 ・・・あそこか」
漸く見つけた、とでも言うように零す
ニャンコ先生の低く通る声。
その視線の先には
海を一望出来るであろう
山の高台に聳え立つ大型の病院。
休日の早朝という事もあり
静かな病院には
救急の文字がやたら赤く光って目立っていた。
そして、大きな風を纏って
救急と書かれた出入口に
音も無く降りるニャンコ先生は
ほっと一息ついた。
「 早く行け。」
「 ・・・ありがとう、先生。」
「 ありがとう、ございます・・・。」
出入口の前で
ニャンコ先生の背中から降りた夏目が
さなが降りるのを手伝いながら
ニャンコ先生に笑いかければ
夏目の言葉につられて
さなも詰まりながら礼を言う。
そして、二人は
意識のない健司を支えて
自動ドアの出入口をくぐった。
・・・
「 ・・・大丈夫ですか!」
「 どうしました?!」
「 はやく、先生を!」
「 ストレッチャー持ってきて!」
救急の出入口を入れば
忙しなく人が集まる。
紺の医療白衣を着た救命医たちによって
健司は素早く酸素マスクと点滴を付けられ
手術室と書かれた部屋へ連れていかれた。
「 ご家族様ですか?
ここでお待ち下さい。」
「 え、はい・・・」
「 よろしく、お願いします。」
残された夏目とさなが
案内される小さな待合室。
そこへ入った途端、
パタパタと去る同じ医療白衣を着た女性。
さなの言葉が
聞こえていたか定かではないが
ふっと一息をつく夏目の横で
頭を下げたままのさな。
そして、静かに
「 ・・・ッ。」
小さな体は、その場に崩れた。
「 ・・・さな?!」
夏目が呼び掛けるも返事は無く、
さなは意識を手放していた。
窓から注ぐ光が眩しい
それは、長い夜が明けた証拠だった。