第10章 ◆人の妖化
「 さなを〝守る〟・・・?」
夏目は今までの的場の言動からは
想像もつかないような言葉に驚き、
「 えぇ、そうです。
彼女を守る役目は夏目くん、
君にしか出来ません。」
「 俺にしか、出来ない・・・。」
そして、疑問を抱えていた。
ー・・・この人は一体・・・。
「 方法は、あるんですか?」
先程まで取り乱し暴れていた夏目は一転
的場に一発入れられたお陰か、
落ち着きながら的場と話す。
「 健司さんとさなちゃんが向かった
最上階の部屋。
あそこには、今回の禁術
人間の妖化をするべく
立体的な陣が描かれていて
その中央には人が1人座れる椅子があります。
そして、
人間の妖化に最も必要な
人間と、そして妖の血。
人間の中にある血液と
同等の量を準備せねばなりません。
今回、会合に集まった祓い屋の式を
地下に集めたのはそれぞれ血を汲む為です。
妖の血も恐らく、準備されているでしょう。」
夏目から目を離すこと無く口早に話す的場。
しかし、夏目は一語一句聞き逃さぬよう
的場の言葉を確りと頭に入れていた。
「 地下って・・・
地下には通路だけで、式の姿はおろか
気配すらありませんでしたよ。」
夏目の言う通り
名取に誘導されさなと向かった地下には
長い廊下と外に繋がる扉、
そして外には小さなボートが架けられている
のみだった。
「 君たちが居たあの地下は
非常口ですよ。
式が居たのは別の地下牢です。
周一さんは余程、過保護なようだ。
何としてでも君達を逃がしたかったのでしょう。」
口角を上げ、微笑みながら
名取についても話す的場は
何処か穏やかで
ふわり、と一つに束ねられた長髪を靡かせ
夏目に背を向ける。
「 話を戻します。
人間の妖化に必要なものは
あと一つです。。
それは、
・・・妖力を備えた人間の死。」
「 死って・・・」
「 そうです。
健司さんは、さなちゃんを
殺すおつもりです・・・。」
いつもより低いトーンで小さく話す的場の言葉に
夏目は唖然とし、
冷静沈着である的場の声が震える気がした。