第2章 ◆新友人帳
「やってくれるかしら?」
女性はそう微笑みさなの手を取れば
さなはハッキリと頷き、友人帳を開いた。
「 我を守りし者よ
その名を示せ…。」
さなが唱えれば
友人帳がパラパラと勝手に頁を捲り
数秒経った所でピタ、と止まった。
さなはその割り出された紙を手に取り
口に咥えると、手を打ち、ふっと息を吐く。
「 如月(きさらぎ)
貴方に返します…。」
その瞬間
紙に書いてあった落書きのようなその文字は
光を発しながら目の前の女性(妖)に
吸い込まれる様にすうっと入っていく。
そして、輝きがおさまったその後すぐ
物凄い脱力感に襲われたさなは
落ち葉が敷き詰められた地面へと
ゆっくり倒れ込んだ。
「 結構…力要りますね。」
「ありがとう。レイコの孫。」
さなが小さく呟けば
如月は微笑みながら
さなの頭を優しく撫でていた。
そして、
如月が何かを思い出したように
さなの頭を撫でる手を止めると
「〝友人帳〟というのは、
一冊だけではないの。」
そう言い切った。
その言葉にさなは落ちかけていた瞼を
必死にこじ開ける。
「 えっ?!」
まだ一度しか名の返還をしていないというのに
まだ友人帳があるのかと思うと
気を失う思いだった。
そんなさなをクスリと笑い見ながら
如月は大丈夫、と続ける。
「友人帳はもう一冊あるけれど
それは貴女とは別のお孫さんが
殆ど名を返したそうよ。」
優しく微笑む如月のその言葉に
さなは安堵したものの
〝別のお孫さん〟
と呼ばれたその人物に引っ掛かっていた。
「 別のお孫さん…?」
さなはひどく重くなっている体を
ゆっくりと起こしながら如月に尋ねると
「貴方と同じ程の少年よ。
レイコにそっくりで
でもレイコほどの凶暴さは無くて
私も名を返して貰おうと彼の元に行ったけど
彼の持つ友人帳には私の名は無かったの。
…貴女に会えて良かったわ。ありがとう。」
如月はそう言うと立ち上がり
くるりと方向を変え
「頑張ってね。さなちゃん。」
そう言い残し、森の奥へと消えていった。