第4章 俺がアイツで、アイツが俺で 【前編】
「真ちゃん、明日マジで頼むぜ〜。特になのだよは付けんなよ?」
「お前こそ、その軽い言動と口調は辞めるのだよ。俺のイメージが壊れる」
真ちゃんはまたいつもの癖で眼鏡を押し上げる仕草をするも、恥ずかしそうに手を下ろした。
こりゃ寧ろ、俺より真ちゃんの方が心配だわ……。
俺は笑い飛ばしながら真ちゃんの肩を叩く。
「いーや、俺は真ちゃんの真似上手いからだーいじょぶだって!寧ろ、お前のが心配だわ」
「……お前に言われなくても人事は尽くす。心配される筋合いなどない」
真ちゃんは仏頂面で意気込むけど、あんまり説得力がない。
「じゃあ危なくなったらフォローすっから!」
「…勝手にしろ」
「任しとけって!あと、夏美に惚れんなよ!!」
俺はヘラヘラ笑いながら釘を刺すと真ちゃんは鼻で笑い淡々と言い返してきた。
「ふん、俺は年上がタイプなのだよ。あんなチンチクリンに惚れるなどあり得ない。そこは安心するがいいぞ、高尾」
「へぇ、そうなんだ。っておい、てめぇ!俺の自慢の可愛い彼女をディスりやがって!」
「お前にはこっちの方が都合がいいんじゃないのか?」
確かにそりゃな。真ちゃんとは拗れたくないし。
けど、夏美は自分の兄貴さえも振り回す魔性の女だからなー。本人は無意識だけど。
俺と付き合っててもかなりモテてるし、俺の隙を突いて近づいてくる奴もいる。全く気が気じゃねーよ。
だから、いつも近くにいる真ちゃんがいつか夏美に惚れてしまうんじゃないかとちょっと心配になってた。
俺は真ちゃんの女のタイプを聞いてひとまず安心するも、ディスられたのはいただけないからちょいと惚気てみる。
「そりゃそうだけど、夏美は全然チンチクリンじゃねーし!この前なんか有名な事務所の社長にスカウトまでされたんだぜ!
ま、夏美は俺だけのモノだからって言って断ったけどよ」
「さり気なく惚気るな!この馬鹿が!」
いつの間にかしょうもないやり取りになっていた時に俺のケータイの着信音が鳴る。画面を開くと夏美からのメールだった。