第13章 見つめる先にあるものは
藍蘭
そうして騒いでいた私たちに
到着の声がかかる。
滝ノ上さんに挨拶をして体育館に向かう。
森然高校。
木兎さんがブロッコリーだかとか、
言ってたキャプテンさんがいる高校。
山に囲まれた、東京とは違う感じ。
まぁ、都心とは離れた場所にあるらしいから
そう感じることもあるのだろう。
藍蘭「横…英語書き…。」
SHINZEN HIGH SCHOOL
登校口であろう場所に掲げられた学校名。
藍蘭「やっぱり東京…」
黒「アホか。東京じゃなくてもアンダロ」
藍蘭「イタッ」
いつの間にか後ろにいて、チョップを
入れたのは黒尾さん。
黒「よう、藍蘭。」
ニヤニヤしてる。
どう対処したらよいのでしょう。
黒「挨拶してんのに無視か。しばらく会わないうちに生意気になっちゃって。」
前と変わらない飄々とした黒尾さん。
藍蘭「お久しぶりですね、黒尾さん。生意気になんて、なってませんよ?」
黒「言い返せるくらいになってんだろ。」
はははっと笑う。
…何でしょう。
少しずつ、目元が笑ってないように感じるのは。
黒「そういえば、連絡の一つもくれなかったよな、藍蘭。」
藍蘭「少し、忙しかったもので…。」
黒「研磨とは連絡取ったらしいジャン。」
藍蘭「ほんの二、三通だけっ…」
黒「二、三通ねぇ…。俺には一通もなかったのになぁ。」
藍蘭「それは、謝りますっ。」
私が言い終えると、
口元に手を当てられた。
手のひらで覆われて、声も出ない。
私に被さるように、みんなの方に背を向けて
何がいいかな、なんて楽しそうに笑っている。
ニヤニヤしてる。
本当に楽しそう。
黒「じゃ、俺の事合宿中クロか、鉄郎って呼んでよ。」
藍蘭「黒尾さんもですか?」
黒「も?」
バスで起きたことを説明した。
藍蘭「大地、旭って呼ぶことになったんです。」
一瞬私から目を逸らした。
黒(澤村くんもですか。)
黒「じゃ、鉄郎。」
藍蘭「えっ!?」
黒「決まり。ほら、行くぞー。」
私の言葉に聴く耳を持たないまま、
引くように体育館に連れて行かれた。