第6章 想う猫への答
赤葦
自販機の横のベンチ。
しっかりと話せたあの場所。
いつの間にか、彼女との大事な場所になっていて
会うとなれば、此処。
ベンチに座り、スマホで時刻を見る。
するとちょうどよく、歩いてくる音がする。
彼女だろう。
藍蘭「お待たせしてしまって、すいません。」
彼女は、申し訳なさそうにいう。
赤葦「大丈夫です。俺も、来たばかりなので。」
少しだけ離れたところに座る彼女。
藍蘭「あの、赤葦さんはなにを気になっていたんですか?」
俺は少しだけ黙って、考えたようにしていた。
本当は聞いてはいけないだろう。
でも、黒尾さんが言った事から受けられる事なんて、
彼女の身には、きっと起きなかったと信じているから。
赤葦「あの、黒尾さんの事なんですけど…」
彼女の肩が少しだけ揺れる。
やっぱり、聞くべきじゃなかった。
赤葦「藍蘭さん。無理して話さないで…」
藍蘭「大丈夫です。お話しします。」
辛そうな顔で、とても話せるような様子ではなかった。
でも、彼女は続けた。
藍蘭「黒尾さんの事を、音駒の皆さんの部屋にお連れして…」
彼女から、押し倒されたところまで聞いた時、
俺は、彼女を抱きしめていた。
藍蘭「あか、葦さん…?」
赤葦「もう、大丈夫です。大丈夫ですから」
彼女は、肩を震わせていた。
赤葦「藍蘭さん?」
彼女の目から涙が溢れていた。
藍蘭「赤葦さん、ごめんなさい。」
黒尾さんとの事を思い出させてしまった俺を
責めずに、俺に謝る彼女を抱く腕に力が入る。
頭を撫でて、安心させるようにぽんぽんと頭を撫でる。
きっと、俺はこれから彼女を傷付ける。