第15章 焦りと不安と幸せ
赤葦
それは深いものに変わっていく。
しっかりと首の後ろを固定して、
逃げられないようにする。
熱に埋もれそうな理性はきちんと働く。
それでも、キスは止まらない。
身体中の酸素が取られて、
とても弱い力で俺のジャージを掴む。
立っていられない、とでも言うように
地面に崩れ落ちそうになるのを必死に我慢している。
ズルズルと藍蘭に引っ張られるままに、
床に座り込む。
チラリと目を開ければ、
苦しさに悶えながら、顔を紅潮せた藍蘭。
涙が出そうになったところでやっと解放する。
肩を震わせながら、荒い呼吸を繰り返しながら
俯いている。
赤「藍蘭」
弾かれたように顔を上げて、また恥ずかしそうに
俯かせる。
赤「俺が言いたいのは木葉さんのことじゃなくて、
藍蘭の不注意のこと……
じゃなくて………。
俺、心狭いんだ。
大袈裟な嫉妬だよ」
こんなの、守れなかった俺の八つ当たりだ。
こんな時に抱きしめてどうするのだろう。
赤「1から10まで身勝手で、ごめん」
赤「全部無理やりで、ごめん」
赤「藍蘭が嫌なことして、ごめん」
赤「怖い思いさせて、ごめん」
パンッと軽い音がした。
胸のあたりを叩かれた。
藍蘭「大丈夫。でも、怖かった。
もう、京治くんのこと嫌いになっちゃうんだから」
いつもの藍蘭だったら見せないまだ俺が見たことのない感情。
藍蘭は小さなこどものような泣き方をした。
拗ねて顔を隠してるのに、ぎゅっと抱きついたまま離れない。
離す気もないのだけど。
藍蘭「……………好き」
不意に来た。
襲ってきた。
赤「……………バカ
なんで今なんだよ」
藍蘭「きっと、私は何度も京治くんをあんな風にしちゃう
どんなに怖くたって、痛いことされても、
京治くんから離れないよってこと、
ちゃんと言わなきゃって」
嬉しかった。
でも、俺は少し怖かった。
ありがとうと言った俺の顔はどんな顔をしていただろう。
藍蘭の優しさに甘えて、もしこれで済まなかったら。
嫉妬は深すぎるほど、相手を苦しめる。
気をつけなきゃいけない
藍蘭を壊さぬ為に。