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もしもしカズナリくん。*短編集*

第2章 もしもカズナリくんが同居人なら。


やだ。
リビングの入口から体が動かない。

部屋まで逃げなきゃ二宮さんが追いかけてくるのに。

あの人、薄情なふりして本当は優しいから。
私は、親友の妹だもん。 尚更。


『なに勝手にどっか行ってんの。 ビックリした』


ほら、すぐに来た。


『リビングに戻るよ?』
「やだ…」
『やだってなんで』
「嫌なものは嫌……」


小さい子みたいに首を横に振って駄々をこねる私。

この角度じゃ顔は見えないけど、二宮さんが呆れてるの分かる。

親友の妹はこんなにワガママだったのかって、きっと思ってる。


『なんで泣いてるのか教えて?』


ちっとも立ち上がろうとしない私を見かねてか、
二宮さんがしゃがんで、私と目を合わせようとする。

だけど私は二宮さんを見れなくて、
ただ首を横に振るだけ。


『首振ってちゃ分からないよ』
「分かんなくていい…」
『カナちゃん…、』
「二宮さんには分からない! 私の気持ちなんて何も分からない!」


ぐすっぐすって、私が涙をすする音は消える気配がなくて
自分でもどうしたらいいか分からない。

そしたら


『ちゃんと俺のこと見てよ』


涙でぐちゃぐちゃな顔を隠そうとした手を引っ張られて、抵抗したら今度は腕を掴まれた。

……嘘。 こんな華奢なのに、どこにそんな力があるの?

呆然とする私を前に、二宮さんは淡々と話し始める。


『……自惚れだったら恥ずかしいんだけどさ。
カナちゃんが泣いてんの俺のせい?』


首を傾げる二宮さん。

それだけの仕草が、もうありえないほどかっこよくて
私、泣いてるくせに、きゃーかっこいいって思ってる。

それだけ惚れてるんだから、
もう頷くしかなくて。


「ちっとも自惚れなんかじゃない……私、二宮さんのこと好きです。たまらなく好きです。 だけど二宮さんの好きな人は別にいて…、」
『ごめん。 ちょっと黙って』


腕をまた引っ張られたかと思ったら
頬に当たる、決して厚くはない二宮さんの胸板。

心臓がどうにかなっちゃったのかってぐらいドキドキして、抱きしめられてるってことになかなか気づかなかった。


『さっき、彼女いるって、俺が言ったらどうする?って聞こうとしたのに。 どっか行っちゃうからさ』
「え……?」
『いないよ、彼女なんて』


私の頬を両手で包んで、微笑みながら二宮さんは言った。
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