第2章 もしもカズナリくんが同居人なら。
「あの! ゲームばっかりしてないで、ちょっとは何かしてくれませんか!?」
『ゲームばっかりしてるわけじゃねーもん』
「は?」
『息だってしてる』
「……」
小学生みたいな屁理屈を並べるこの人は、私の同居人。
春と共にやってきた、同居人。
お兄ちゃんの親友らしくて、
ある日お兄ちゃんが、何だか部屋を探してるって言うからお前の部屋貸してあげて。って言ってきた。
私は、うんともすんとも頷いていないのに
この人は
『……ドウモ』
図々しくも私の家に上がり込んだ。
まだ私は一人暮らしを始めたばかりで。
まだお酒を飲める歳でもなくて。
そんないたいけな女の子一人の部屋に、成人した立派な大人の男が居候?
そんなのありえなくない!?
そう吠えてかかった私にお兄ちゃんは
『大丈夫。 お前みたいなチビ誰も襲わねぇ』
って言ってきた。
ほんと失礼なやつ。
類は友を呼ぶというべきか。
『休日に家に閉じこもってさぁ。 その年で彼氏の一人もいないの?』
両手におさまるゲーム機の光る画面とにらめっこしながら、この人…二宮さんは言う。
あぁ、お兄ちゃんがいてもそう言うんだろうね。やっぱ似てるわアンタたち。
「余計なお世話ですぅー。 というか、二宮さんだって休日は引きこもって、ゲームばっかりじゃないですか。 その年で彼女いない方が痛いと思いますよ?」
乾いた衣類が雑に放り込まれた洗濯カゴから
二宮さんのTシャツを取り出してアイロンをかける。
ほんと、彼女でもない友達の妹にアイロンがけしてもらってるのって痛いと思いますよ?
そう言ったら、二宮さんは『余計なお世話だよ』って、笑いながら私と同じことを言った。