第12章 雑踏
大勢の人が行き違う歌舞伎町。その中を神楽は傘をさしながら歩いていた。
「……」
(暇アル)
もともとお妙と2人で買い物に行く約束をしていたのだが、ゴリラ……ではなく真選組局長近藤勲が志村家に護衛という名のストーカーをしに来たので、お妙が始末するために川に捨てに行ったのだ。
(あのゴリラめ……姉御とせっかく約束してたのに……)
そんなこんなで、何かと不機嫌な神楽は口を尖らせて散歩をしていた。
「……あ」
「……あ」
神楽は顔を歪ませた。なぜなら、目の前に沖田がいるからである。この人混みの中でたまたまばったり会ってしまったのだ。
「……何してるアルカ? 仕事はいいのか、ポリ公」
「……こう見えても、町の巡回をしてるんでさァ。いつもいつもサボってるわけじゃないでさァ」
「……そうアルカ」
神楽は半目で沖田を見た。ーー普段の行いが悪いからか、どうしても信用できない。
「……まあ、なんでもいいアル。私は暇じゃないから行くアルヨ。じゃあな」
神楽はそのまま、沖田の隣を通り過ぎようとした。しかし……。
「ちょっと待て」
沖田はいきなり神楽の肩を掴んだ。
「な、何するネ! 私はお前みたいな暇人じゃな……」