第10章 幸せな誕生日
「そうなんだ!? おめでとう! 良かったネ。おめでとう! 本当に生まれてきて良かった!」
涎を垂らしながら、神楽は沖田の言葉を遮って言った。
「やんねェっつってんだろ」
呆れた様子で沖田は言ってから、少しだけ考えてニヤリと笑った。
「へっ、そーだなァー。全力で俺の誕生日を祝う歌を歌えたら、一切れくれェ恵んでやってもいいぜィ」
(ま、どーせ、こいつのことだから怒って歌わねェんだろーけど)
沖田の頭の中では、ムカッと怒った顔をして『ふざけるなヨ! 誰がお前なんかの為に歌うアルカ!』と言う神楽の姿が浮かんだのだが……。
「歌います!」
沖田の予想に反して、敬礼をして素直に言うことを聞いた神楽の姿が目の前にあった。それを見て、沖田はガクッと転びそうになってしまった。
(調子狂う……。そんなに食いてェか、こんなのが)
そう思っている間に、神楽はあーあーと声を出して歌う気満々である。そして、神楽は笑顔全開でクルクル回りながら可愛く歌い始めた。
「ハッピバースデートゥーユー
ハッピバースデートゥーユー
ハッピバースデーディア……
ソーゴォ〜〜♪」
ドキッ
その笑顔を見た瞬間、沖田の胸は高鳴った。
「ハッピバースデートゥーユー♪」
「……」
歌い終わった神楽は親指を沖田に向けて立てて、ドヤ顔を決めている。