第8章 木の下で
「うーん! 疲れたアル!」
神楽は伸びをした。
今は補習の後。補習が終わったら、神楽と総悟の2人は公園で少しお話をする約束をしていた。ーーいわゆる、公園デートっていうやつだ。
「本当に面倒くせェなァ。こんなんだったら、もう少し勉強しとけばよかったでィ」
総悟は神楽の隣で眠そうにあくびをした。ーーこの補習は1学期の中間テストと期末テストの結果が悪かった生徒が呼び出されて、無理矢理やらされている補習なのだ。総悟はもともと、そこまで成績の悪い生徒ではないのだが、普段の授業態度や勉強のしなさすぎで補習対象者になってしまったのだ。一方……。
「お前は少しやればできる人間だからいいアルヨ。私なんか最悪ね。国語とかマジで意味わかんないアル」
ふてくされた顔で神楽が言った。ーー神楽は中国からの留学生のため、国語があまりわかっていなかった。特に、古典は酷いものだった。
「でも、銀ちゃんが教えてくれるから、まだよかったネ」
国語の担当である銀八先生は3Zの担任である。それに、神楽の大好きな先生でもあった。
「……」
総悟は神楽を少し睨むような目で見た。
「……お前は誰の彼女なんでィ」
そう言うと、総悟はベンチにもたれていた体を起こした。そして……。
「……!?」
神楽の頭を自分の方に向けさせて、総悟は神楽の唇に自分の唇を重ねた。