第5章 手に入れたいもの
ある日の3Zの放課後……普通の生徒ならば、学校が終わった後にショッピングに行ったり、ゲームセンターに行ったり、ご飯を食べに行ったりして友達と遊びに行くはずの時間帯なのだが……。
「何で私だけ居残りアルカー!」
瓶底眼鏡をかけた変な日本語の女の子が1人、教室で叫んでいた。ーーこの少女の名前は神楽。中国から来た留学生だ。
「銀ちゃん、いくら私の国語のテストが赤点だったからって、こんなにたくさん課題を出さなくてもいいアル……」
神楽はこの前行われた1学期中間テストの国語のテストの点数があまり良くなかったのだ。そのため、銀八から居残りを命じられて、泣く泣く課題をやっているのだ。ーーこのままの神楽の成績では夏休みがなくなる可能性があるからだ。神楽の夏休みだけがなくなるならまだしも、銀八も神楽に勉強を教えなければいけないため、夏休みがなくなる可能性がある。そのため、どうしても神楽に期末テストで挽回してもらわなければいけなかったのだ。
「私だって……私だって、姉御たちと一緒にご飯食べに行きたかったネ……」
そう言いながらも、神楽はプリントを少しずつ終わらせていった。
「……」
そんな神楽を遠目から見ている人影がいたことを、神楽は気付いていなかった。
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