第1章 俺のお姫様
「♪〜世界で一番お姫様〜♪」
頭を2つのお団子にして、黒い髪留めで留めているサーモンピンクの髪の毛の可愛い女の子が1人で歌を歌いながら、歌舞伎町の大通りをスキップをしている。
町を歩く人々はその女の子が通り過ぎると、次々と振り返った。
「あの女の子……可愛くないか?」
「あァ、あんな子が歌舞伎町にいたなんて……」
そして、彼女の容姿についてこそこそと耳打ちをした。ーー歌の上手い下手は別として。
「♪〜そういう扱い心得て……」
「おい、チャイナァ」
女の子はその声を聞くと、ゲッと嫌な顔をして声のした後ろを振り返った。
そこに立っていたのは、黒い隊服に身を包んだ栗色の髪の若い男だった。
「……サド、何の用アルカ?」
「お前こそ。何でィ、その服は。どこぞのお嬢さんの気分ですかィ?」
チャイナと呼ばれた女の子ーー神楽は近くに寄ってきた男を見上げてムッとした。
「姉御に着付けてもらったアルヨ」
そう言うと、神楽は沖田総悟に着ている衣装を見せびらかすようにその場でくるりと一周回った。
「どうアル?」
にこりと口角を上げて、神楽は沖田に聞いた。
「ヘッ、そんなもん、テメェみてェな可愛くもねェ奴が着ても、宝の持ち腐れ……馬子にも衣装ってやつでさァ。勿体ねェな。その服も可哀想でさァ」