• テキストサイズ

Mein Held(進撃の巨人:ジャン夢)

第1章 Mein Held


 アニと向き合っているアグネスの表情は嘲笑が浮かんでいた。シーナに行きたがるジャンには散々「自分勝手」だと責めていたが、アグネスも人の事を言えない立場にいるからだ。時の流れで人は変わるのが常であり、ジャンの弱さも人間として当たり前の感覚だ。むしろ戦いに武者震いを覚えるアグネスの方が少数派である。けれど、過去の思い出はアグネスを苦しめていた。長々と語っていた話で分かるのは彼女が「過去のジャン」、否、「ヒーローのジャン」を求めている事であり、それこそジャンに負けず劣らずのエゴで彼女は物を言っている。

「それだけじゃないんだろう?」

「分かる?」

 けれど全てお見通しでも言うように、アニはアグネスから更なる答えを求めた。まだ本心は隠している事を確信していたアニは、案外すんなりとその事実を認めたアグネスの答えを静かに待つ。


「私、ミカサが羨ましい。私はずっとジャンを見てきたし、アイツに振り向いてもらえるように努力もしてた。けど、ミカサは一瞬でジャンを虜にしたんだもの。一目惚れ? ずっと色恋沙汰に興味を示さなかったクセに。悔しくない訳ないじゃない、あの野郎。」

 ジャンに反発する本当の理由。それはただ自分を見て欲しいと言う想いから来ていた。いつもいじめっ子から守ってくれたジャンと共に育ったアグネスは、ごく当たり前に彼に恋をする。幼少期はとても幸せだった。自分に女として興味を見せなかったジャンと居るのは何かと辛い想いをする事もあったが、それでも他の女にも興味を見せなかった彼と共に過ごせるのは一種の優越感を覚えさせた。彼と過ごせる女は自分ただ一人。そう思えば実らない恋でも構わなかった。
/ 17ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp