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Mein Held(進撃の巨人:ジャン夢)

第1章 Mein Held


 白熱していた口論は、アグネスを撥ね除ける事でジャンが終止符を打った。アグネスの左肩を押し返した彼は、そのまま踵を返してその場を去る。キリキリと歯を食いしばりながら遠ざかる背中を見つめる事しか、アグネスには出来なかった。ただ立ちすくむ彼女の元に、一人の訓練兵が声を掛ける。

「また随分と煩い喧嘩をしたじゃないかい。」

「……アニ。」

「毎日あんな風に喧嘩されちゃあ、見てるこっちまで疲れるよ。」

「ごめん。けど、どうしても言い合いになっちゃう。」

 声を掛けたのは同期のアニ・レオンハートだった。入団当初、対人格闘術を通して仲良くなった数少ないアグネスの友人である。見た目だけは華奢で低身長の二人だが、格闘術に置いては他の兵士達の中で群を抜いていた。スタイルは微妙に違うが、互角に張り合える技はあるだけに、二人は何度も組み手をしている内に友情を芽生えさせた。普段は一匹狼なアグネスとアニだが、空いた時間を見つけては二人で行動する事も増えてきたこのごろである。

「昔からアンタ達はあんなだったの?」

 アグネスとジャンが同じトロスト区出身の幼なじみだと知っているアニは、素朴な疑問を投げかけた。その声には疑問よりも呆れが多く含まれているように聞こえる。それもそうだ。訓練兵団入団当初から、アグネスとジャンは毎日欠かさず喧嘩をしている。しかも毎回同じ内容。一年も時が過ぎても変わる事なく続けられる口論に、周りの訓練兵達も「第104期訓練兵団名物」と称している程である。二人が入団前からこのような関係だったのだろうと想像する者は多い。
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