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Mein Held(進撃の巨人:ジャン夢)

第1章 Mein Held


 ガス欠になりかけてはいるが、戻るだけには十分の量がボンベに入っているだろう。出来るだけ屋根から屋根へは足で飛び移り、長距離のギャップがある時にだけ立体機動装置を使う。そうして走り続けていれば、後は立体機動装置で二、三回空を飛べば辿り着ける場所まで来ていた。

 トリガーを引き、二本のワイヤーを発射させる。目標の建物にしっかりとアンカーがはめ込めば、後は流れに身を任せて前へ進むだけだった。

 「え。」

 視界が歪む。目に見える光景が、横へと勢いよく流れて行った。

 何が起きたと言うのだろう。まるで何者かによってワイヤーを引っ張られているようだ。唐突な出来事が頭が上手く動かず、アグネスはただこの予想外の状況に呆然とするしかなかった。

 気づけば体は建物の側面に叩き付けられる。受け身も取れずに受けた衝撃は、容赦なく脳を震わせた。意識はかろうじて保てたものの、ショックで何も出来ない。ただ分かるのは、己が何者かによって襲われている事だけだ。右のワイヤーは引っ張られた時にでも抜けたのだろう、立体機動装置から地面までゆらゆらと揺れながらぶら下がっていた。左のワイヤーは恐らく引っ張った犯人が建物の屋上で持っている。力の抜けたアグネスの体は、左のワイヤーからぶら下がったまま、ズルズル、ズルズルと建物の壁を上へ引きずられる。

 間違いない、上には討伐し損ねた巨人がいるのだ。

 その推測通り、屋根の上へ引っ張り上げられたアグネスが見た物は、2メートル級の巨人だった。腕がやけに太いソレは、未だ動けないアグネスの上半身を逆さまで鷲掴みにする。巨人の手からはみ出た彼女の両脚は、あっという間に巨人の口へと運ばれた。
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