第7章 やっと、レベル4に、なりました
宇宙ステージは正直もう嫌いだ。二度と行きたくない。
まず、酔った。
「うおぉうぇぇ...」
「ちょっ!?お、お兄ちゃん大丈夫!?」
そして戦いにくい。
「ダンボールルルゥるーるるるー」
鼻歌混じりのカールドボード・クリエイタの声。俺らの距離は十mを切っていたが全然進めない。
俺は身体を海老反りにしたりして作用反作用の法則で【カールドボード・クリエイタ】が紙一重でよけて空振りまくる槍にイライラゲージがマックスに達しようとしていた。
「あたれよ!?」
「だれが!?」
【カールドボード・クリエイタ】はM型アバターだ。頭と腕と胴体と足は全て長方形のダンボールに覆われていて頭には横一文字のアイレンズがついており、首や二の腕には輪っかに丸められたダンボールがあってアバターの素体が全く見えないデザインだった。
「メープル!援護っ援護をっ」
俺はうしろの岩にしがみついている【アーバン・メープル】こと美羽に言った。
「お兄ちゃんごめん。怖いから無理」
「うおい!?」
「ふふはー!ざまー!くら...オブっ!?」
最後の音は俺が顔面に柄頭をぶつけてやったからだ。
「痛つつつ..ナイフぅ!お前もなんかせんかぁ!」
「いやね、ナイフがね上手く飛ばなんだよ。無重力なんかもう嫌だー」
間延びした声で【グルウ・ナイフ】は言った。声や姿からしてF型アバターだろう。
体はつるんとした白い装甲に線が所々に沢山入り、そこにグルウ、ようするに接着剤が流れていた。
そして腰周りには白い帯がクロスしてついておりナイフが帯に沢山ぶら下がっている。
そして橙色のアイレンズをまたたかせて【グルウ・ナイフ】が言った。
「あ、クリエイタ、後ろ後ろー」
間延びした声で言うそのセリフに俺は舌打ちした。そて槍を【カールドボード・クリエイタ】に向かって渾身の一突き。
「ぽぐぅ!?」
変な叫び声とともにくの字に体を折って無重力を浮遊し吹っ飛んでいく【カールドボード・クリエイタ】。
ちなみに吹っ飛んでいく際、俺にも同じ力が働くのだが、俺は幸い後ろに岩があったのでそこに着地した。
「おー、お兄ちゃんあと一人だよ!がんばー!」
「お前なあ...」
俺は改めて【グルウ・ナイフ】に向き直った。
向いた瞬間「ひえー」と言ったのはきっと聞き間違いだろう。