第7章 やっと、レベル4に、なりました
『フィジカルバースト』
それはレベル4になると使用できるようになるボイスコマンドの一つである。
一つである、というのはレベル4になると『アンリミテッドバースト』という無制限フィールドに行けるようになるボイスコマンドも獲得するからだった。
フィジカルバーストは思考のみを10倍に加速出来るようになるボイスコマンドだ。
わかりやすく言うと極限状態に陥った人や達人が時々言っている『視界の動きがスローになる』という奴ヤツを人為的にやるというヤツだ。
消費するポイントは5ポイント。
通常対戦で消費するのは1ポイントなので簡単に言うと通常の加速より5倍手間かかってます。ということだった。
それはさておき。
俺の目の前には螺旋を描いて飛ぶ弾丸がある。
しかしその動きはのろのろとしていて...と言っても綺麗に俺の眉間を狙い定められていて殺す気満々の弾丸なのだが可愛いものだった。
俺は思考のみ10倍に加速された状態で身体に命令を送る。
狙われているのは眉間だ。数cm顔を横にずらせばよけれるだろう。
そして俺は徐々に弾丸が近づいてくる中、弾丸がこめかみの横を綺麗に通っていくぐらいに顔を移動させる。
その瞬間、加速が切れた。
ビュオンッ!!
俺の耳元で鳴る空気の摩擦音。
流石に完璧によけることは不可能だったようでこめかみからツーと血が垂れる。
目の前には驚愕に顔を染めているスキンヘッドの姿があった。
両手に持っていたはずのアーミーナイフがないことに俺はいまさらながら気づいたが、きっとショルダータックルした際に手を離したのだろう。
事実、廊下に転がっているし。
「な...!?き、貴様は...!?いったい何者だ!?」
「俺はただの兄妹思いのお兄ちゃんだよ」
「ふざけるなッ!!!ただの人間にあの距離から発射された弾丸をよけれるわけないだろう!?」
あー...めんどくさ...。
「黙ってろ、お前の身柄は拘束する、警備員に任せてなぁッ!」
語尾が荒くなったのは、スキンヘッドの意識を完全に刈り取るため放った回し蹴りの掛け声だった。
頭蓋骨が陥没しているかしていないか心配だったが見るからには大丈夫そうだ。泡ふいってけど。
俺は振り返って呆気に取られていた美羽と数人の女子生徒に向かって言った。
「いくか」