第3章 譲れないマシュマロ【氷室辰也&紫原 敦】
ーSide ナナー
夏休み後半に差し掛かるもギラギラと燃えるような暑さはまだ続いていた頃、久しぶりのオフに陽泉バスケ部メンバーで海水浴に来ていた。
しかも今日は女子も男子も休みで、男女合同でワイワイとはしゃいでいる。
海水をお互いきゃっきゃうふふと掛け合ったり、サングラスをかけてオイルを塗りあって日光浴したり、砂場でふざけあったり、ビーチフラッグを取り合ったりとまさにリア充そのものだ。
…けど、私はある理由で純粋に楽しめずにいて、皆の荷物番をただ1人寂しくしてその様子を見守っていた。
そう、生まれつきのこのぽっちゃり体型のせいだ。しかも身長高めだから余計どっしりと見える。
一応店員さんに押されて買った水着を着てるけど、この見苦しくぷよぷよした体型を見せたくなくて、パーカーのチャックを胸元まで閉めている。
この体型のせいで幼い頃から散々からかわれ、好きな男の子に勇気を出して告白してもメタくそに言われて見事に断られの繰り返し。
頑張ってダイエットしてちょっと痩せたら、結局ストレスで大好きなお菓子を食べてリバウンド。
おまけに顔も可愛いわけじゃないし、性格だっておかげで捻くれちゃってぶっちゃけいいところなし。
もう恋なんてできないと思ってしまい、最近は自虐したり皆の前では自称サバサバ系女子を演じてノリのいい友達ぶっている。
でも今はレジャーシートの上で体育座りして1人いるんだから、ノリは悪いかな。
特にガールズトークなんて以ての外。私には話せる事が何もないから、始まったら適当に相槌を打って頭でずっとありもしない妄想を繰り広げている。
で、その妄想の相手はいつも憧れの氷室先輩だ。