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君がいた夏

第2章  爪痕【赤司征十郎】*裏あり



…今暫く眠っていろ、もう一人の僕。
安心しろ、上手くやるさ。


意識の裏側に沈んだもう一人の僕に言い聞かせると、僕は彼女に近づいて微笑みを浮かべる。
目の奥にギラついた欲望を潜ませて、ね。

「…赤司君、頭痛そうでしたけど大丈夫?」

「ああ、これぐらい大したことないよ。心配かけてすまないね」

彼女は心配そうに僕の顔を見つめるも、僕は微笑みを崩さない。

「本当?ならいいんですけど。あまり無理なさっては駄目ですよ」

「はは、ありがとう。それにさっきのバイオリンだが僕よりも上手いかもしれないな」


褒めると彼女がその大きくて綺麗な目を見開いて食いついてきた。


「赤司君もバイオリンをやられているんですか?」

「あぁ、幼い頃からね。…どうやら僕達気が合いそうだね」


こうして彼女の耳元で囁き、彼女は身を強張らせる。なんとも可愛らしい…。


「…私も、赤司君と共通点があるなんて、とても…嬉しいです」

彼女は緊張しているのか、震える声でその可愛らしい唇から言葉を発する。
僕はそんな彼女の顔を覗き込み、甘く優しく吐息を交えて囁いた。


「そんな可愛い事を言うなよ。君は罪な子だな」


「え!?私、何かしました!?」


彼女のリアクションに思わず内心戸惑うが平静を装った。

こいつは天然なのか?…けど、まぁいい。
少し抜けている方が事を運びやすいからな。


「違うよ、僕は…君の事が好きになってしまいそう、という意味で言ったのさ」


僕の想定通り、白い肌を林檎のように真っ赤に染めて口をわなわなと震えさせる彼女。
僕はそんな彼女を落ち着かせるべく、優しくキザな口調で言い聞かせた。


「!!で、でも私達まだ知り合ったばかりじゃ…?」


「あぁ、だからお互いをこれからもっと知り合おうじゃないか…」


「そ、そうですよね!嫌だ、私ったら」


また恥ずかしそうに両手を頬に当てる彼女。
そして特に拒否もせず、満更でもないという感じに俺は口角が上がりニヤつく。


そう、知り合って君をたっぷり愛してあげるよ。







…第二のナナとしてね。



fin.



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