第12章 第11セット
*優side*
控え所に戻るために選手たちの一番後ろを歩いていると
背後から声をかけられた。
「優」
久しぶりに聞く、懐かしい声。
出せない声の代わりに呼ばれた方へ振り向く。
私を呼んだのは牛島若利。
牛「久しぶりだな。優」
静かに微笑む私に疑問を持ったらしく少し眉をひそめた。
私は、持っていたノートの一番後ろに《声がね、出ないんだ》と書いてみせた。
牛「そうか。」
少しだけ沈黙が訪れた。
うぅ、、、ちょっと気まずい、、、
マネ「ゆうさーん。」
そろそろ行かなきゃ、、、
そう思って彼に背を向け歩き出そうとしたら、急に手首を掴まれた。
びっくりして彼を見れば
牛「なぜ、白鳥沢に来なかった。お前の実力であれば推薦で来れたはずだ。」
彼の目を見れず俯く私。
牛「それに、なぜ選手ではなくマネージャーをしている。せめて選手であってくれればと思っていたのに」
もはや何も言えず黙りこくるしかなかった。
マネ「ゆうさん!」
また呼ばれたのでノートの切れ端に私のアドレスを書いて渡し、みんなの元へ向かった。
彼がどんな顔をしていたかなんて全く分からなかった。