第7章 星標
それから二日たっても有希ちゃんは目覚めなかった。
ずっと眠ったままで、時折魘されては身を捩る。
僕はその度に有希ちゃんの身体を擦り、浮かぶ汗を拭った。
もう片時も有希ちゃんの側を離れたくなかった。
その間に僕の一番組の巡察当番があったけど、左之さんの十番組が代わってくれた。
道場での若手隊士の稽古も僕の代わりに新八さんが出てくれてるし、朝昼晩と山崎君が食事を持って来てくれる……
僕がここから離れないのを誰も何も言わずに、皆が然り気無く支えてくれた。
今朝、近藤さんと土方さんが大坂から戻って来たらしい。
そんな時にはいつも一番に出迎える有希ちゃんが姿を見せないんだから、きっと何かあったんだって悟られるだろうな。
近藤さんは兎も角、土方さんは絶対に誤魔化せないだろうし…。
すぐに僕の部屋に土方さんが飛んで来るだろうって思ってたのに、土方さんは夕刻になっても現れなかった。
そういえば…ずっと屯所中が騒がしかったような気がするけど、何か問題でも起こったのかな?
僕と有希ちゃんと……平助は、これから先一体どうなるんだろうね。
土方さんはどんな沙汰を下すのかな?
でも例えどんなに非道な状況に追い込まれたとしても、僕は絶対に有希ちゃんと離れないから………。
結局、その日の夜遅くになって近藤さんと土方さんが僕の部屋にやって来た。
何があったかはもう把握しているんだろう……近藤さんなんて泣きそうな顔をしてたし……。
そして有希ちゃんの無惨な姿を見て近藤さんは益々今にも泣き出しそうになり、土方さんは悲痛な溜め息を一つ漏らした。
近藤さんにしてみたら有希ちゃんが傷付けられた事は勿論だけど、その傷を付けたのが平助だっていう事実が堪らなく悲しかったんだと思う。