第2章 4月の風が靡く頃
「そんなこと…」
やはり、彼には思考まで見抜かれてしまう。
「思っていること、すべて正直に話してください」
真剣な瞳で揺らぎもせず私だけを捉える彼は、とても凛々しい。私が存在するよりも、そんな彼が生きている方がずっと、何倍も…何十倍も価値がある…私にもそう思えて仕方ない。
「……私たちが仲良しで、いなければよかったのに」
「え?」
溢れそうな涙を抑え、消え入りそうな声でつぶやいた。
「逢ってしまったらだめなのは、ねぇ どうしてですか?」
彼にだって分かるはずのない質問。
堪えた涙だってとうにぽろぽろ零れている。
彼は零れる私の涙を指で拭いながら言葉を紡いだ
「貴方が感じている世界、触れている空気、流れる時間。すべて私も同じなのです。貴方の目には見えていなくても、私は存在していました。もちろん、貴方も。 つまるところ、どちらかが本物で、どちらかが偽物かだなんて…ある訳、ありませんよね?」