第4章 会いたい人
医務室にいる間、負傷者がいない限り暇になる。
あらかじめ私室から持ってきていた医学書を机の引き出しから取り出した。
ページで言うと500ページはあるであろうこの医学書を好んでいた。
今まで様々な医学書を読み漁っていたが、これが1番勉強になる。
時間を忘れて没頭していると業務時間が終わりを迎える時間になっていた。
読んでいた医学書を持ち医務室から出ようとドアを開けると、今まさにドアを開けようとしていた小柄な人物が目の前に立っていた。
「リヴァイ兵長!」
驚きのあまり思わず叫ぶ。
「お前は叫ぶ事しか出来ねぇのか」
リヴァイは鋭い眼光でこちらを見てくる。
身長に関してはほぼ同じなので、視線が平行に交わる。
「団長から今晩帰って来ると聞いていたので…」
「今は夜だ」
そう言い切るが窓の外を見る限り明らかに夕方だ。
「邪魔するぞ」
それだけ言ってリヴァイは半ば強引に医務室に入ってきてコルネリアを少し押しつつドアを閉める。
よく分からないが何か嫌な予感がした為リヴァイの姿を目で負うと、彼は近くにあったベッドに座った。
そして目つきを変えることなく無表情で口を開く。
「俺が居ない間、何もされていないよな?」
何の事を言っているのか相変わらず分からなかったが、とりあえず「はい」とだけ答えた。
その言葉でリヴァイはため息をつく。
何か不満でもあるのだろうか…?
「エルヴィンからお前の話は全て聞いた。
他の兵士に絡まれたらしいな」
「あ…その事ならミカサとハンジさんが助けてくださいました」
微笑みながら言うと冷たい言葉が返ってきた。
「てめぇ…自分の立場を分かっていないだろ」
「へっ…?」
先程から言われる言葉の1つ1つの意味が分からない。
もう少し分かり易く説明して欲しい…
「お前に絡んできた兵士はお前より兵歴は長いが、立場はお前のほうが上だ。
ハンジは滅多に人を殴らない。
それぐらいあいつはお前の立場を守ろうとしている証拠だ」
言われてみればそうだ。
あの時初めてハンジが殺意を剥き出しにしたのを見た。
というより、新兵として入団したばかりの出来事だったのであまりハンジの事を知らなかったが、長い付き合いのリヴァイがそう言うのであれば余程の事だったのだろう。
「後もう1つ」
まだ鋭い眼光を放ちながら告げられた。