第1章 憧れの人
あの時私は1人の人物に目を奪われた。
104期として訓練兵を卒業する時に調査兵団の勧誘をする第13代調査兵団のエルヴィン・スミス団長の後ろで立っていた人物。
上位10位以内に入らなかった私には駐屯兵団か調査兵団の選択肢しか与えられない。
そんな中勧誘に当たっての調査兵団の状況を聞いていると団長とは全く正反対の体格の人物が居た。
本来ならば駐屯兵団に入ろうと考えていたが調査兵団に入る事に決めた。
あの人が居る場所に…
「調査兵団を希望する者は残ってくれ」
エルヴィンがそう言うと大勢の同期が立ち去る中、私は動けずに居た。
そして調査兵団への入団が決まった。
その夜、荷物整理をしているとミカサが話しかけてきた。
「コルネリア、駐屯兵団を希望していなかった?」
「うん…ちょっと考えが変わったんだ」
「考え?」
ミカサは顔色を変えずに同じく荷物整理をしながら聞いてくる。
「エルヴィン団長の後ろに居た人って誰か分かる?」
「あのチビの事?」
怪訝そうに言うミカサを余所にコルネリアは整理を続ける。
「確かにチビだね…」
「あれは調査兵団の兵士長のリヴァイって人だよ」
「兵士長?」
「分かり易く言ったら団長の次に偉い人だね」
「そうなの!?」
コルネリアは驚いてミカサを見ると気にする素振りを見せずに淡々と答える。
「あれでも一個旅団並の戦闘能力を持ってるらしいけど、私は嫌い」
はっきりと答える彼女から視線を逸らして荷物整理の続きをした。
「人って見た目で判断出来ないね」
そう言うとミカサは荷物整理が終わった様で手伝ってくれた。
「明日から調査兵団か…
ミカサはエレンが調査兵団に行ったから行くんでしょ?」
「うん」
短く答えたミカサの動きが止まった。
どうしたのかと思いミカサの表情を見ると明らかに曇っている。
「エレンは幼い頃から調査兵団に憧れてた。
巨人化の能力の事で憲兵か調査兵団かって話になったけど、最後はあのチビのおかげで調査兵団に決まった」
「そっか…」
エレンが巨人化出来るという事は同期はおろか、兵士達皆が知っている。
「それでもエレンが居る調査兵団に行ける事になったから良かったね」
「そうだね。
ただエレンがどんな扱いをされてるのかが気になるよ」
「確かに…」
ミカサの言葉に同感した。