第1章 君との出会い
「浅野さんの席はあそこね」
そう指差されたのは結構かっこいい男の子の横。はわあ、明らかにモテる人ですよね。
私、メンクイじゃないけど、あれはほんとにかっこいいよ。やばい、やばい女子を敵に回しそうで怖い。
「俺は葉山裕也。よろしくな、浅野さん」
こ、声がかっこいいです。イケボです、やばいです。
どどど、どうしようまじでこれはだめだ。うーくおぉー。
「よ、よろしくお願いします……」
消え入りそうな声でそう言うと、葉山君はにこっと笑った。この人、絶対モテる人だ。今確信した。
絶対そうに違いないよ。
「それでは短学活を終わります」
先生がそう告げると、一瞬のうちにクラスの女の子に囲まれた。
「ねえねえ、浅野さんって転勤族?」
「お父さん何の仕事してるの?」
「この席いいでしょ? 右が素敵でしょ!?」
「なんて呼んだらいい?」
「前の学校どこだったの?」
あああぁ~よくある質問タイム! 何度も思ってるんだけど、私は聖徳太子じゃないから、そんな一斉に話しかけられても答えられません!
「う。あの」
私がうろたえていると、どこからか明るい声が聞こえてきた。
「みんな、落ち着いて。浅野ちゃん困ってるっしょ。まずはあたしぃ~」
「あーっもう、紗有! 奪うのはやめてよ、私たちのオアシスを~」
今度は私の前にいた女の子が嘆く。しかしその声は紗有ちゃんに抑えられる。
「鈴那、横が目当てでしょ」
「ううぅっ」
鈴那ちゃん、図星だったみたい。悔しそうに去っていく。するとばらばらと他の女の子たちも離れていき、遠巻きに私と紗有ちゃんを見ていた。