第1章 そばにいるから【草津】
なんなら証明してやろう。
そう言ってニヤリと笑った彼の顔が視界いっぱいに広がる。
そのまま唇に感じる柔らかい感触。
目を閉じる暇もないまますぐに離されてしまったけれど、何をされたかくらいは理解できた。
「まったく…僕としたことが破廉恥なことをしてしまった」
「は、破廉恥って…」
「…責任は取ってもらうぞ、」
その言葉に互いに笑いあう。
責任を取るなんて古風な言葉、普通は男性が女性に言うものじゃないのだろうか。
でもそんなことはどうだって良かった。
彼がそばにいることを許してくれた、求めてくれた。
それだけで十分で、それだけが全てで。
「もう、嫌って言っても離れたりなんかしないよ」
共にいることをあなたに誓う。
ずっとそばにいる。
もう二度と孤独になんかしない。
優しく手を差し伸べてくれる錦史郎。
その手を迷いなく握り、そのまま彼の胸に顔を埋めた。