第7章 女を輝かせるのは【下呂】
視界の隅に特徴的な桃色の髪が映った時、反射的に叫んだ。
「阿古哉さん!!!」
「…え?君…」
案の定彼は驚いた顔をする。
彼とはどうしたのとやや怒ったように眉を寄せながら近づいて来た。
そんな彼に、勢いよく抱きついた。
「は?!ちょ、何?」
「好きです、阿古哉さん」
「え?」
「工藤くんに会って分かりました。私を1番輝かせてくれる人はあなたなんです」
いきなりのことだったからふらつくも私を受け止めてくれた阿古哉さんは、私の言葉に固まった。
これ幸いと思いをぶちまける私だったが、突然彼に強く抱きしめ返され今度はこちらが固まる。
「馬鹿だね、君は。折角僕が気を使って2人にしたのに」
「やっぱり、そうだったんですね」
「上手くいくと思ったのに、僕の所に戻ってくるなんて」
「阿古哉さんの傍にいられるなら、馬鹿でいいです」
「……好きだよ」
お互い腕の力を緩め、視線が絡まる。
どちらからともなく近付き、やがて重なった。
彼の髪が頬に当たってくすぐったくてつい笑うと、阿古哉さんは顔をしかめた。
「…空気読んでもらえます?」
「ご、ごめんなさい」
「良いです、あなたにそんなことは期待してないから」
それはそれで悲しい。
阿古哉さんの方をちらりと見ると、彼は困ったように笑うと私の頬に手を添えた。
「あなたは、僕のそばで笑っていれば十分…それと、」
その服、よく似合ってますよ。
さっきは言えなかったから、と照れたように告げてくれる彼がとても愛おしくて。
もう1度阿古哉さんに抱きついた。
「これからは、僕が誰よりも君を輝かせるよ」