第6章 優しくて、大好きで【鬼怒川】
「……え?」
「それを申し込みに、今日来たんだよ」
言葉と共に差し出された小さな箱。
震える手でそれを開けると、中でリングが銀色に輝いていた。
指輪と熱史くんを交互に見ると、彼は柔らかく微笑んで私の頬にキスをする。
返事を聞かせてと甘く囁かれて、顔が熱を持つと共に涙が溢れてきた。
「ほ、ほんとに?ほんとに私でいいの?」
「ちゃんが良いから、こうしてアメリカまで来たんだよ」
「…っ、熱史くん!!」
思い切り彼に抱きつくと、彼は私を受け止めて抱きしめ返してくれる。
熱史くんの温もりに包まれている今が幸せすぎて、どうにかなってしまいそうだ。
「嫌だなんて言うわけない…私を、熱史くんの妻にして下さいっ…!!」
「…良かった」
泣きじゃくる私を見かねて彼は目尻を拭ってくれるけれど、とめどなく涙は溢れる。
「泣き止んでよ…参ったな」
「嬉し涙だもん…ありがとう、熱史くん」
「礼を言うのは俺の方だよ」
抱きしめていた体を少し離し、彼と目を合わせる。
熱史くんの瞳も少し濡れていて、彼も緊張してたんだと教えてくれた。
「熱史くん、大好き」
「俺も…愛してるよ、」
どちらからともなく合わせた唇は涙でしょっぱかったけど、今までにしたどのキスよりも幸せなものだった。