第20章 彼が欲しいもの【高尾】
「………え」
思わず食べようとしていたウィンナーを橋から落とす。
それを見ていた緑間が露骨に汚い、と不快感を出してきた為謝罪をして落としたそれを拾った。
「…で、今日が何?」
「だから誕生日なのだよ」
「誰の?」
「だから高尾のなのだよ」
知らない。
あの日、バイト先に高尾と緑間が現れたことをきっかけに話すようになって早5ヶ月。
経緯に関しては省略するが、いままで頑なに話そうとしなかった彼らと関わるようになり見たことのない二人の一面を見れてわりかし楽しい日々を送っていた。
高尾にしろ緑間にしろ結構理解してきたと思っていたのに、誕生日すら知らなかった事実に愕然とする。
11月21日。
今日は高尾和成の誕生日だった。
道理で一週間前からクラスメイトの女子がきゃあきゃあ言っていたわけだ。
我がクラスの誇るハイスペックの誕生日とあらば印象に残るように趣向を凝らしたプレゼントを渡そうとするのも頷ける。
「……まさか、知らなかったのか?」
最近バイトの数を増やしていたからてっきりその為の資金集めかと思ったのだよ、と言ってきた緑間の言葉に若干嫌みを感じ思いきり噛みついてやった。
「違うわ、ただ暇なだけ!」
今までと変わらず無趣味無特技で時間の潰し方がわからないからただバイトを増やしたのだが変な風に受け取られたようだ。
だが今はそんなことに怒っている場合ではない。
一応彼には世話になっているし、ここは祝っておかなければ気がすまないし、どこか申し訳ない。
話すようになったばかりの頃、同様に緑間の誕生日も知らなくてかなりおくれてそれを祝ったことを思い出す。
あの時2度と同じ間違いはすまいと心に誓ったのに早くもそれを裏切りそうだ。
「やば、どうしよう…」
何かを買う暇がなければ作る暇もない。
どうやって祝ったものかと多くの女子からプレゼントを貰っている高尾を見ながら必死に思案した。