第19章 ずるい女でごめんなさい【青峰】
「理央奈…」
部活の時間。
いつもの屋上から、いつもの青空を見上げながら、青峰大輝は1人の女性の名前を呟いた。
それは数年前から、彼の頭を占める名。
九条理央奈。
あの日、公園で彼女と再会してから数ヶ月が経った。
それから、彼女とは1度も会っていない。
「何してんだよ、アイツ…」
幼い頃、よく遊んでくれた年上の少女。
それが理央奈だった。
優しくて面倒見の良い彼女に対し、幼くて小さな恋心を抱いていたものの、それを自覚するよりも前に彼女は地方の高校入学のため引っ越していって。
その後近況を知る機会も術も無くした青峰は、理央奈を思うことしかできなかった。
それから3年の時を経て、2人は再会したのだが。
今のところ2人の関係にあまり進展はない。
「好き、なのか…?」
彼女と全く会えないことに寂しさを感じている自分は、幼少期の頃のまま理央奈に惹かれているのだろうか。
問いかけてみるも、青峰しかいない屋上で答えが返ってくるはずもなく。
ただひたすらに静かな空間の中、彼は再会した時のことを思い出していた。