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短編集【黒子のバスケ】

第18章 遅くなったお祝い【緑間】



2人で歩く帰り道に会話はない。
しかしその沈黙を思いとは感じなかった。


「あ、ねぇ、寄り道していい?」
「構わないのだよ」


その静けさを破り、彼女は俺に許可を取ると小走りにコンビニの中へと入っていく。
一緒に入ったところで見るものがないため外で待っていると、しばらくしてから袋を下げて戻ってきた。


「…何だ、それは」
「ちょっと待って……はい」


そのときの九条の顔が先程より明るく見えたので、何を買ってきたのか問いかけると、何を思ったのか彼女は袋からそれを取りだし、俺に差し出す。


差し出されたものは1本のアイスだった。


「何のつもりだ」
「…一応、誕生日プレゼント。遅くなっちゃったけど…」


今日のラッキーアイテム、ソーダでしょ。
言われてアイスを見てみると、なるほど確かにアイスはソーダ味だった。
ラッキーアイテムと言えないこともない、が。


「なぜ、今日なのだよ?」
「うっ…」


図星を突かれたためか明後日の方向を見て誤魔化す九条。
その様子が可笑しくて思わず笑みをこぼすと、それにつられて彼女も笑った。


「遅くなっちゃったけど…ハッピーバースデー、緑間」
「…あぁ」


再び帰路を歩き始める。
先ほどよりほんの少し近くを歩く九条に、喜びを感じる自分がいた。

気にしないようにと頬張ったアイスは冷たかったけれど、自分の中の熱い何かを冷ましてはくれなかった。
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