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短編集【黒子のバスケ】

第16章 広い背中【青峰】


「大輝…私分かってなかった」
「……」
「大輝のこと知ってるつもりで、何1つ分かっちゃいなかった」

その広い背中に、温かい背中に手を添える。
私が抱きしめ返したことに気付いた彼は、抱く力を強めた。
苦しいくらいのその力が、私に痛いほど彼の思いを告げる。

「…ごめんなさい、そして虫がいいかもしれないけど」

「私をもう1度あなたの彼女にしてほしい」

大輝は震えていた。
そして私の声も震えていた。

互いの存在を確かめるように強く抱き合って。
未だ降り続ける雨なんて関係ないくらい、温もりを分け合った。

「…そばにいて欲しかった」
「うん」
「俺はっ…別れる気なんてなかった…」
「…うん、これからは聞く。だから話して、あなたのこと」

彼は何度も私の名を呼ぶ。
その度に私は答えた。

ごめんね、大輝。
そしてありがとう、こんな私を許してくれて。

もう間違えないから。
あなたの彼女として、あなたを支えられる存在になるから。





雨が止んだ後、私は再び彼に背負われて無事下山した。
クラスの集合時間にはどうにか間に合い、班員にお小言は食らったもののなんとか遠足は終わった。

「九条さん」
「桃井さん…」
「大ちゃん、物凄く心配してたよ。血相変えて走ってったんだもん」
「…そっか」
「あれ、驚かないの?」

桃井さんにはずっと私達の仲を心配されていた。
ヨリを戻す気はないのかと問いかけられる度、もう彼は私を好きではないと答えていたのだから、穏やかに笑って返す私に彼女は驚く。

「別に。大輝が何考えてるかは今なら分かるから…彼女だしね」

そう告げた私の右手の薬指では、銀色の輪が輝いていた。
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