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短編集【黒子のバスケ】

第13章 甘い補習時間【黄瀬】



彼女のことを無意識に目で追うようになったのはいつからだろう。

学級委員でしっかり者の彼女。
そのくせおっちょこちょいで、何かやらかしてしまう彼女。

"あはは…やっちゃった"

そう言って困ったように笑う彼女のことが頭から離れなくなったのはいつからだろう。

「可愛いんスよね…」
「ちょっと、黄瀬くん?聞いてる?」

件の彼女、理央奈の声ではっと頭をあげる。
目の前には教卓に寄りかかりながら、少し怒ったように眉を寄せた九条理央奈がいた。

「え、ああ、何スか?」
「やっぱり聞いてない!今何の時間かわかってる?」
「いやわかってるッスよ!怒らないで、怒らないで理央奈っち!」

時は放課後、場所は教室。
オレは今、補習を受けていた。

モデルの仕事が忙しくなり、授業にしばらく出席できずにいたオレを見かねて、遅れた部分を教えようと申し出てくれたのが彼女。
他の女子生徒も次々と申し出たのだが、学級委員の彼女が適任だろうということになった。

数学、古文、化学。
様々な教科を分かりやすく教えてくれる。

先生の授業より楽しいそれはなかなか癖になりそうだった。
が、黒板より理央奈の方ばかり見てしまうのでなかなか授業は進まない。
そろそろ真面目に受けないとヤバイと肩をすくめた俺は黒板を見る。

そこであることに気がついた。

「もう…」
「いや、それより理央奈っち、その問題…」
「何?わからないの?」
「さっきもやったッスよ…?」

時折こうしたうっかりミスをする理央奈は本当に可愛いと思う。
指摘するときょとんと目を丸くして、俺と黒板を見比べて。

「あ、あはは…やっちゃった」

ごめん、と苦笑い。

この表情にやられない男がいるだろうか。

恥ずかしさを紛らわせるために間違えて書いた問題を必死に消す彼女にこっそり近付いて抱きしめた。
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