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短編集【黒子のバスケ】

第10章 june bride【高尾】



「私も、愛してる」

和成の腕の中はいつだって安心できる。
この人のそばなら大丈夫だと断言できる自分がいた。

「行こうぜ」
「うん」

雨で冷えていた手も、体も、もう温かい。
大切な、大好きな人がその体温を分けてくれたから。

こうやって生きていくのだ。
いろんなことを分け合って、助け合って、感じ合う。
この人となら、それが出来る。

今日、私は誓う 。
高尾和成を愛し、支えていくと。

「そういえばさ、和成」
「ん?」
「ジューンブライドにしたかったのは何で?」
「あぁ…」

問われた彼は少し言いづらそうに頬を掻くも、空を見上げながら話し出す。

「ジューンブライドのジューンってさ、ローマ神話のユーノーからきてるっていう説があるじゃん」
「うん、だから6月に式を挙げるとユーノーに見守られて幸せになれるっていうあれね」
「そうそう…俺は別に神なんて信じてるわけじゃないし、そんなのいなくても俺自身がお前を幸せにするつもりでいる」

繋がれた手に力が込められる。
そっと握り返すと、決意の秘められた彼の瞳と目が合った。

「でもさ、俺はまだまだ未熟だから、この先お前にたくさん苦労かけるかもしれない。だから、保険」
「保険?」
「お前が俺から離れていかないように」

ガキみたいだろ?
お前に捨てられたくないから、いなくなって欲しくないから、こうやって留めようとするんだ。
ジューンブライドは幸せになれる、だから、必ず幸せになれるから俺を信じて辛い時も耐えてほしい。
俺はお前をそばに置いておくために、神さえも利用する。

「…なーんてな」

最後におどけてそう言った彼に、今度は私から抱きついた。

「っ、理央奈?」
「バ和成」
「え」
「そんな保証なくても、耐えるに決まってるでしょ…神様じゃなくて、私は和成に幸せにしてもらいたいんだから」

和成の気持ちはすごく嬉しかった。
そこまで必要としてくれるのは、至上の喜びでもある。
だからそれに応えてみせると、ありったけの力を込めた抱擁で伝えた。

「ありがとう、理央奈」

笑い合い、今度こそ唇を重ねる。
愛しさが溢れて、同時に涙もこみ上げた。

大好きだよ、和成。

結婚生活の女神に見守られながら、
私、九条理央奈は、高尾和成と今日、永遠を誓いあう。
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