第7章 梅雨の彼【青峰】
「今日も雨かぁ…」
折角の休日をあざ笑うかのように降る雨。
ため息をつきながらカーテンを閉め、室内に視線を戻す。
「大輝、そんな拗ねないでよ」
「拗ねてなんかねぇよ」
「嘘。バスケ出来なくて残念なのはわかるけどさ、この季節はそんなもんじゃない」
今日はデートの代わりに大輝にバスケを教えてもらう約束をしていた。
ストリートコートでしごいてやる、と嬉しそうに笑う彼を思い出すと、余程今日を楽しみにしてくれていたのだとわかるけど、それで拗ねられても私にはどうすることもできない。
仕方なく私の部屋に上がった彼はベッドに寝転がり、雑誌を読んでグダグダしている。
それをなんとか宥めて機嫌を直してもらおうとしている私を横目でちらりと見ると、大輝は面倒そうに雑誌を置いてこちらを見る。
「ったく、拗ねてねぇっつってんだろ」
「……じゃあ笑って」
雨だから部屋においでよと誘ったメールの返信の文面から既に彼の不機嫌は醸し出されていた。
直接顔をあわせると案の定彼は口角を下げていて。
今は少し落ち着いて真顔となっているけれど、彼女としてはやはり笑顔を見せて欲しかった。
一緒にいるのだから、楽しんでほしい。
そんな当たり前のことを願って。
「どんな顔してようが俺の勝手だろ」
「お願い、大輝」
「……っ、たく、仕方ねぇな」
お前に頼まれると断れねぇんだよ。
目を逸らしながら漏らす彼の頬は少し赤い。
そんな優しい彼につい笑みをこぼし、座り直した大輝がそばに来るように手招いたので素直に従う。
後ろから抱きしめられた体勢になると彼の呼吸が近くで感じられて、羞恥心が湧き上がってきた。
耳に息を吹きかけられると反射で身をよじり、体を離そうとするもその反応を面白がる彼は抱きしめる腕の力を強めてそれを許してはくれない。
先ほどとは打って変わった甘い雰囲気に、
先ほどとは全く違う大輝の行動に、
少しずつ体は熱くなり、胸の鼓動は速くなる。
「大輝…」
「んだよ」
「雨の日…嫌い?」
これ以上甘ったるい空気が流れるとまずいと悟った私のとっさの言葉に彼はいや、と返す。
「雨は雨で好きだぜ、お前で遊べるからな」
「…私でって、っ!?」
聞こえる不穏な言葉を言及しようと振り返る。
その瞬間まるで待ち構えていたかのように大輝の手が私の頭を掴み、そのまま唇が触れ合った。
