第6章 見つけてくれた人【黒子】
その言葉に赤くなると、
何を想像したんですか?
なんてからかうように聞いてくる。
別になんでもないとごまかして慌てて話題を変えると、彼はおかしそうに笑いながらもその後は追求しないでいてくれた。
「バスケしてるテツヤくん、カッコ良かったんだってね」
色んな女子が騒いでいた。
幻の6人目がどんな人なのか、プレイスタイルなのか。
優勝したともなれば彼のミスディレクションも役に立たないくらい目立つらしく、歩いていたりすると声をかけられるらしい。
あまりしない経験だから新鮮だと話す彼はチームメイトのそばに行くとすぐに気づいてもらえている。
それは喜ばしいことなのだけれど、ほんの少しの寂しさもあった。
(もう、私以外の人もテツヤくんを見つけられるんだね)
だから彼はここにいて、勝利をつかんで笑ってる。
でも、彼を見つけるのはいつだって私でありたかった。
そんな我儘を飲み込んで話している彼を見つめていると、ふいに目が合う。
「理央奈さん、少し外に出ませんか」
「え?うん、良いけど」
突然の申し出に驚いたものの、断る理由がないので頷き、チームの方々に断りを入れると二人で外に出た。
「どうしたの?テツヤくん」
「すみません、少し二人きりになりたくて」
外は春が近づいてきているとはいえまだ肌寒い。
冷たい風に目を細めているとテツヤくんが上着をかけてくれた。
しかし彼の言葉に心臓の鼓動は高鳴る一方。
テツヤくんは意図が読めずに呆然としていた私の頭をそっと撫でる。
そして、
「今まで、僕のそばにいてくれて、約束を守ってくれてありがとうございます」
開口一番、頭を下げられた。
礼を言われることじゃないと彼の顔を上げさせると至近距離で視線が絡まる。
その思ったより近い距離に身を引こうとした。
けれどそれは彼に腕を掴まれ叶わなくて。
その後彼の口から紡がれた言葉に、涙がこぼれた。
人の心の動きに敏感な彼が、私のことも見てくれていたと分かるから。
「僕はあなたに見つけてもらえたから、ここにいます。あなたがいなければ、今の僕はないんです」
涙を抑えられない私と額をくっつけて。
「誰が僕を見つけても、あなたじゃなきゃ意味がない。あの日のかくれんぼのように、僕は理央奈さんに見つけて欲しいんです」
微笑む彼に、大好きの想いを込めて再び抱きついた。
