第5章 外を教えてあげよう【赤司】
「理央奈、これが外だよ」
これが、外。
話でしか、映像でしか、写真でしか知らなかった外。
「はい、ありがとうございます、征十郎さん」
こんな景色を見せてくれたこの人には感謝しかない。
深々と頭を下げると彼は私の肩に手を置いて、私と目線を合わせた。
「お礼が欲しくてここに連れてきたんじゃないよ」
「君の笑顔が見たかったんだ」
頰に熱が溜まるのがわかる。
今日会って、話しただけなのに、私はもうこの人に惹かれていた。
彼の言葉は魔法のように私の心を明るくしてくれる。
こんなにも優しくて、叶わないと諦めていた願いを叶えてくれた人に、惹かれないわけがない。
「あ、りがとう…征十郎さん」
「これからも、僕が君に外を教えてあげよう」
だから、僕の側にいてほしい。
これから先、一生。
至近距離で見つめ合う。
彼の瞳に吸い込まれそうになりながら小さく頷けば、彼も満足気に頷き、誓いの証だというように私の髪にそっと口付けた。