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短編集【黒子のバスケ】

第5章 外を教えてあげよう【赤司】


生まれた時から全てを決められていた。

着る服、食べるもの、習い事、友人。
さらには結婚相手まで。

「はじめまして、赤司征十郎だ」
「九条理央奈です」

目の前に敷かれたレールを歩くことはとても楽なことではあるけれど、自分の道は自分で選択したい。
でも、それは叶わないだろうと諦めていた。

「九条さん?」
「は、はい!何でしょう」

ぼーっとしていたのだろう私に赤司さんが声をかけて下さる。
慌てて返事を返すと彼はそんなに慌てなくてもいいと微笑む。

赤司征十郎さんは眉目秀麗、成績優秀かつスポーツも良く出来るということでまさに完璧そのものという人。
そんな人との将来が約束されているのだから、私は喜ぶべきなのだと思う。
でもやっぱり普通に学校に行って、恋愛をして…そんな当たり前なことを望んでしまう。

「そうか、君は学校にも行っていないのか」
「はい、家庭教師に勉強を習っておりまして」

所謂箱入り娘です、そう呟くと赤司さんは少し考えるような素振りをすると、突然私の手を掴んで立ち上がる。

「あ、赤司さん?」
「征十郎でいいよ、僕も理央奈って呼ばせてもらうから」
「…征十郎、さん…どちらへ?」
「庭に出よう、今頃桜が咲いているはずだ」
「桜?でもここの庭に桜なんて…」

赤司さん、改め征十郎さんに連れられ屋敷を飛び出し、庭にやってくる。
やはりそこに桜はなく、どこからか舞い込んできた花びらが地面に落ちているだけ。

征十郎さんを見上げると、彼は動じた様子はなくそのまま私の手を引き歩く。
どこに行くのか尋ねても彼は着くまで秘密だとはぐらかした。

「せ、征十郎さん…」
「大丈夫、君は何も心配しなくていいから」

なんと彼は門も出て、外に行くらしい。
慌てて話しかけると安心させるように微笑みかけられて何も言えなくなってしまう。
結局手を引かれるがまま歩いて行くと、彼はある場所で立ち止まった。

「っ…綺麗…!!」

そこは征十郎さん曰く絶好の花見スポットで、散り際とはいえたくさんの桜が咲き乱れていた。
今まで写真やテレビでしか見たことのなかった桜に思わず見惚れてしまう。

「どうだい?」
「とても素敵です!」

彼の問いに笑顔で答えれば彼もまた微笑む。
その姿は絵画のように美しく、この人となら共に生きていけると、その時なぜかそう思った。
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