第1章 眩しすぎるあの人【高尾】
興味のないスポーツ用品店でバイトする毎日。
いくら自宅から近くても、時給がよくても、楽しくもなんともない仕事を延々とこなす時間は苦痛でしかなかった。
「閉店まであと二時間…」
流石に学校終了時から閉店時間までシフトをいれたのはマズかったかもしれない。
腰は痛いし足取りもおぼつかない状態で、あと二時間働けるのだろうか。
進んでないように見える壁時計を恨めしく見つめながらバッシュの整理を始めたその時、
「うっわ、真ちゃん、それもって店入んの?」
「当然なのだよ。ラッキーアイテムは片時も手放さん」
自動ドアが開き、学生が二人入ってきた。
いつもは条件反射でそちらを向き、いらっしゃいませと声を出す私達店員だが、今回は思わず息を飲んで話せなかった店員もいた。
理由は簡単、学生二人はかなりの美形だったのだ。
身長もそれなりにあり、ここにやって来る時点でスポーツをしていることは明白。
彼らは優良物件の代表といえる存在だった。
「片方は性格に難があるけどね…」
私がポツリと呟いた言葉に周囲の同僚は気付かず、自分の好みかどうかをしきりに話している。
それにしたって彼女らはなぜ片方が持っている犬のぬいぐるみについて触れないのか。
もしかして気付いていないのか。
恋は盲目とはまさにこのことだと、呆れ混じりにため息をつく。
「なんでここに来るかな…」
学校から遠いここなら絶対に会わないと思っていたのに。
━━━私は彼らを知っていた。
高尾和成と緑間真太郎。
知っているどころかクラスメイトだから毎日顔をあわせている存在。
そして私が苦手としている人達だ。
「見つかりたくないなぁ…」
本音を口に出し、ため息をつく。
その時、同僚の何人かがこちらに近づいてきた。
「ねぇ、あの校章九条さんのと同じだよね、知り合い?」
「もしそうなら紹介してよ~」
彼女らは頬を赤く染めて、恥ずかしそうに話す。
その様子はどう見ても恋する乙女で、青春してるなぁ、なんて他人事のように感じる自分に苦笑した。
「紹介って言われてもあまり話さないし…」
「てことは知り合いなのね?!」
「え、あ、まぁ…」
知り合いと分かると更に詰め寄ってくる同僚達。
正直鬱陶しいし仕事に戻りたい。
どれもこれもあの二人のせいだ。